大学広報 TikTokで炎上を防ぐ:撮影許可・個人情報・コメント対応のルール
TikTokは、大学の「雰囲気」や「人の魅力」を短い動画で直感的に伝えられる強力な広報チャネルです。一方で、撮影許可の取り忘れ、個人情報の写り込み、コメント欄での不用意な応対など、ほんの小さなミスが一気に拡散して炎上につながりやすい面もあります。大学は学生・教職員・保護者・地域・企業など関係者が多く、同じ動画でも受け取り方が割れやすいからこそ、運用ルールを先に整えておくことが最大の予防策になります。
ここでは、大学広報がTikTokを安全に運用するための実務ルールを、撮影許可・個人情報・コメント対応を中心に、現場でそのまま使える形でまとめます。
炎上の多くは「投稿後」ではなく「企画の前」に起きている
炎上は投稿後に起きるように見えますが、原因の多くは企画段階にあります。動画が面白いかどうか以前に、次の3点が曖昧だと事故が起きます。
- 誰が責任者か(最終決裁者、緊急時の判断者)
- 何を目的にするか(受験生向け、在学生向け、地域向けなど)
- やらないことは何か(政治・宗教・個人攻撃・過度な煽り等)
運用チームが小規模でも、最低限「投稿前に誰がどこを見るか」を固定しましょう。例えば、企画担当→撮影担当→編集担当→広報責任者(または担当課長)という一本の承認ルートを作るだけで、確認漏れが減ります。
さらに、炎上しやすい“地雷”はだいたい決まっています。企画会議で一度、次のパターンに当てはまらないか確認するだけでも効果があります。
- 身内ノリが強すぎて、外から見ると侮辱や差別に見える
- 学内のルール違反(立入禁止・授業妨害・危険行為)に見える
- 特定の個人がからかわれているように見える
- 企業ロゴや商品が強く出て、広告・ステマに見える
- 制度説明が不正確で、誤解を広げる
2. 撮影許可のルール:場所・人・権利の3つを押さえる
撮影許可で揉めるポイントは「ここで撮っていいの?」「この人を映していいの?」「これは映していい権利なの?」の3種類です。先に分類してルール化すると迷いません。
2-1. 場所の許可(キャンパス内でも“自由”ではない)
キャンパスは大学の管理地でも、すべてが撮影自由とは限りません。特に次の場所は、原則として事前許可または撮影禁止の扱いにしておくと安全です。
- 研究室、実験室、共同研究スペース(機密・安全面)
- 医療系施設、カウンセリングルーム、保健室(配慮・守秘)
- 職員室、事務室(書類・個人情報の写り込み)
- 寮、部室、ロッカー周辺(生活情報、所有物)
- 試験中や成績掲示に近い場所(公平性、情報漏えい)
- 警備上重要な設備の近く(入退室管理、鍵、暗証番号表示)
おすすめは、撮影可能エリアを「青(自由)/黄(要申請)/赤(禁止)」の3区分で地図化することです。学生スタッフにも共有でき、運用が安定します。
学内行事やオープンキャンパスのように人が集まる日は、入口や会場に次のような掲示を出すだけでもトラブルが減ります。
- 撮影が入ります。映り込みが気になる方はスタッフまでお声がけください。
- 撮影禁止エリアは掲示をご確認ください。
2-2. 人の許可(同意の取り方を標準化する)
大学広報の動画では、学生や教職員が最も魅力的な被写体になります。しかし、顔が映るだけで肖像に関する問題が起きる可能性があります。
基本原則
- 個人が特定できる形で映すなら、事前に同意を取る
- 同意は口頭だけでなく、記録に残る形(フォーム、同意書)を推奨
- 同意の範囲(用途、媒体、期間、二次利用)を明確にする
具体ルール例
- インタビュー、密着、顔が大きく映る:必ず書面またはフォームで同意
- 集合写真のような引きの画:掲示で周知+スタッフの声かけ(可能なら事後確認)
- 未成年が多い場合:学校種や状況により保護者同意の要否を事前確認
- 出演者が大学関係者でない(来訪者、業者、地域の方など):必ず事前同意
同意取得で重要なのは「断りやすさ」です。「今さら断れない」空気があると後で揉めます。声かけは、次の2点をセットで伝えると安全です。
- 断っても不利益がない
- 映らない対応ができる(角度を変える/モザイクにする/別カットにする)
2-3. 権利の許可(音源・ロゴ・掲示物・作品に注意)
TikTokは音源文化が強い一方、権利面の落とし穴も多いです。特に大学は公共性が高く、指摘されやすい立場にあります。
注意ポイント
- BGM:使用可能な音源か(商用利用に該当する可能性を含む)
- ポスター、掲示物、アート作品:著作物が映り込んでいないか
- 企業ロゴ:タイアップに見える映し方になっていないか
- 教材、書籍、論文:内容が読める形で映っていないか
映り込みが避けられない場合は、ぼかし・トリミング・撮影角度の調整で対処します。編集で消せないものは「撮らない」が最も安いコストです。
3. 個人情報のルール:映像は“データの塊”だと考える
TikTokの炎上で多いのが「本人は気づかなかった情報が写っていた」事故です。動画は静止画より情報量が多く、視聴者が一時停止や拡大で見られる点も忘れてはいけません。
3-1. 絶対に映してはいけない代表例
- 学生証、職員証、名札(学籍番号、氏名)
- 成績、出欠、評価表、答案、試験問題
- パソコン画面(メール、名簿、チャット、研究データ)
- ホワイトボード(会議メモ、個人名、予定)
- 郵便物、宅配ラベル、住所、電話番号
- 入退室の暗証番号、鍵、IDカードリーダー
- 医療情報、相談内容、配慮事項
「読めなければOK」ではなく、「推測できないか」まで考えます。例えば、教室の時間割、特定の学生の行動パターン、寮の部屋番号などは、単体では弱い情報でも組み合わせると特定につながります。
3-2. 個人情報を扱う場面の運用ルール
出演者のプロフィール紹介は盛り上がりますが、出しすぎは危険です。
推奨ルール
- フルネームは原則出さない(必要な場合は本人同意+大学としての方針を確認)
- 学部・学年・所属は、細かくしすぎない(学科+研究室名まで出す等は慎重に)
- 撮影場所の詳細はぼかす(「〇号館3階の奥」などは避ける)
- 通学経路や生活圏が特定できる情報は出さない
- 本人のSNSアカウントの晒しにつながる誘導はしない(本人の希望がある場合でも慎重に)
3-3. 撮影データの保管と共有も“個人情報対応”の一部
炎上は投稿だけでなく、撮影素材の流出でも起きます。スマホに素材が散らばっている運用は危険です。
最低限のルール
- 素材の保存先を決め、アクセス権限を限定する
- 個人端末に長期保存しない(必要なら暗号化や端末管理の仕組みを使う)
- 出演者の同意書と動画素材を紐づけて管理する
- 一定期間後に削除する(保存期間を決める)
「動画が消えれば終わり」ではありません。素材が残っていれば再拡散や二次被害につながります。
4. コメント対応のルール:反応しない勇気と、反応する技術
コメント欄は、大学の“窓口”として見られます。ここでの一言が、大学全体の姿勢だと受け止められることがあります。だからこそ、コメント対応は担当者のセンスに任せず、方針を決めて運用します。
4-1. まず決める:コメント欄をどういう場にするか
おすすめは「情報提供+対話は限定」の設計です。すべてに返す運用は負担が大きく、炎上時に対応が追いつかなくなります。
運用方針例
- 質問には、答えられる範囲で簡潔に回答
- 個別事情が絡む相談は、公式窓口へ誘導(コメントで深追いしない)
- 意見・感想には、必要に応じてお礼だけ
- 挑発、煽り、人格攻撃には反応しない
- 差別、脅迫、個人情報の書き込みは削除・ブロック
4-2. 削除・非表示・ブロックの基準を文章化する
「消した=隠蔽」と受け取られるリスクがあるため、基準を明確にします。コメント欄の固定コメントやプロフィールに、短い運用ポリシーを置くと透明性が上がります。
削除対象の例
- 個人情報(氏名、連絡先、学籍番号等)
- 誹謗中傷、差別表現、脅迫、性的な嫌がらせ
- 虚偽情報の断定的拡散(被害が広がる可能性が高いもの)
- 広告、スパム、なりすまし
- 第三者の権利侵害(写真の転載は禁止転載誘導等)
4-3. 返信文の基本ルール(短く、穏やかに、事実に寄せる)
炎上を広げる返信には共通点があります。「感情的」「言い切り」「個別事情に踏み込む」「相手を論破しようとする」です。大学広報は勝ち負けではなく、信頼を守るのが目的です。
返信の型
- 感謝:コメントありがとうございます。
- 共感:ご不安なお気持ち、もっともです。
- 事実:現時点でお伝えできる範囲は以下です。
- 案内:詳細は公式窓口で確認いたします/個別のご相談は〇〇へ。
- 締め:今後も改善に努めます。
テンプレとして使える言い回し
- 「ご指摘ありがとうございます。確認のうえ、必要があれば対応いたします。」
- 「個別の状況によって異なるため、公式窓口でご案内します。」
- 「誤解を招く表現がありました。分かりやすい形に修正します。」
- 「学内の安全配慮の観点から、詳細はコメント欄でお答えできません。」
4-4. 事実関係が未確定なときの鉄則
分からないのに答えると、訂正が必要になり二次炎上が起きます。
未確定のときの対応
- 推測で答えない
- 「確認中です」を言う(ただし連発しない)
- 事実確認ができるまで、追加投稿や強い反論は控える
- 必要に応じてコメント欄を制限する(荒れが激しい場合)
5. 投稿前チェックリスト:30秒で確認できる項目に絞る
現場で回るチェックは短くないと定着しません。投稿直前に全員が同じ観点で見られるよう、最低限の項目に絞ります。
撮影許可
- □ 撮影場所は撮影可能エリアか(要申請なら申請済みか)
- □ 出演者の同意は取れているか(記録が残っているか)
- □ 外部の方や未成年が映る場合の扱いは確認したか
- □ 著作物、ロゴ、掲示物の映り込みはないか(または処理したか)
個人情報
- □ 名札、学生証、画面、書類、ホワイトボードが読めないか
- □ 生活圏や行動パターンが特定される情報はないか
- □ キャプションに個人を特定する情報を書いていないか
内容
- □ 誤解を招く表現や過度な煽りがないか
- □ 事実確認が必要な数字・制度説明は確認したか
- □ 大学の価値観(多様性・安全・学術的誠実さ)と矛盾しないか
コメント運用
- □ コメントポリシーに沿っているか
- □ 想定される質問への回答方針は決まっているか
- □ 炎上した場合の連絡先・判断者は共有されているか
6. もし炎上してしまったら:初動で被害は大きく変わる
どれだけ備えても、誤解や切り取りは起こります。大切なのは、慌てて動かないことと、放置しないことの両立です。
初動の基本手順
- 状況把握:どこで何が拡散しているか、論点は何かを整理
- 事実確認:関係部署(学生課、広報、教務、研究倫理、法務等)に確認
- 判断:動画の修正、非公開、説明投稿、謝罪の要否を決める
- 記録:削除しても、元動画・コメント・時系列を保存(再発防止に必須)
- 再発防止:ルールの穴を特定し、運用に反映
謝罪が必要なケースでは、「何が起きたか」「誰に迷惑をかけたか」「どう直すか」を短く明確にします。言い訳に見える説明は逆効果になりやすいので、事実と今後の対応に絞るのが安全です。
7. 学生スタッフと一緒に運用する場合の注意点
大学広報でTikTokを成功させるには、学生の感性が大きな力になります。ただし、学生に“責任”まで背負わせると事故が起きます。役割分担をはっきりさせましょう。
おすすめの役割設計
- 学生:企画案、撮影のアイデア、出演、編集(一次案)
- 職員:許可確認、個人情報確認、最終チェック、危機対応
学生向けの短い研修(30分でも効果あり)
- 撮ってはいけないものの具体例(名札、画面、白板)
- 声かけの仕方(断りやすさ)
- コメント欄で返信していい範囲(原則、学生個人は返信しない)
8. まとめ:ルールは“縛り”ではなく、継続のための仕組み
TikTok運用のルールは、自由を奪うためではなく、安心して挑戦を続けるための土台です。撮影許可は「場所・人・権利」を分けて管理し、個人情報は「写り込み+組み合わせで特定」を前提に守り、コメント対応は「反応しない基準」と「反応する型」を決めておく。これだけでも、炎上の確率は大きく下がります。
大学広報が守るべきものは、再生数だけではなく、学生と教職員の安全、大学への信頼、そして学びの場としての品位です。ルールを整えた上で、大学らしい魅力を、短い動画で丁寧に届けていきましょう。
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