大学広報 SNSガイドライン例:NG事例・承認フロー・危機対応まで
大学広報 sns の運用は、受験生・在学生・保護者・卒業生・地域・企業など、多様な相手と日常的につながれる一方、たった一投稿が大学全体の信頼に影響することもあります。個人情報、誤情報、炎上、アカウント乗っ取り、研究成果の取り扱いなど、大学ならではのリスクも多いので、現場で迷わないための「判断基準」と「手順」を先に決めておくことが重要です。
ここでは、すぐに社内文書として流用できる形で、大学の公式SNS運用に必要なルール、NG事例、承認フロー、危機対応までをひと通りまとめます。学部・研究科・入試・国際・就職・図書館など部署が分かれていても共通で使えるよう、汎用的に整理しています。
1. ガイドラインの適用範囲(どこまで守るか)
1-1. 対象アカウント(例)
・大学の公式アカウント(大学名義)
・入試広報、オープンキャンパス、国際交流、キャリア、図書館、附属機関など部門アカウント
・研究室やセンターの発信(大学のロゴや名称を使用し、公式に見えるもの)
・期間限定アカウント(イベント用、プロジェクト用)
1-2. 対象者(例)
・広報担当職員、教職員、学生スタッフ、委託先(制作会社・代理店)
・投稿作成、撮影、校正、承認、コメント対応、分析を行う全員
1-3. 原則
・このガイドラインは「禁止のため」ではなく「安全に成果を出すため」のもの
・迷ったら、投稿しないで確認する(スピードより信頼を優先)
2. 運用の基本方針(大学らしさの土台)
2-1. 大学発信の基本姿勢
・正確であること(事実確認が最優先)
・中立であること(政治・宗教・特定思想への肩入れに見えない)
・尊重すること(多様性、個人の尊厳、差別の排除)
・安全であること(個人情報、研究安全保障、施設安全に配慮)
・誠実であること(誤りは隠さず、必要に応じて訂正する)
・一貫性があること(口調、表記、ルールが部署ごとにバラバラにならない)
2-2. 発信の目的(例)
・受験生向け:学びの魅力、学生生活、入試情報の導線
・在学生向け:学内情報、イベント、支援制度、締切案内
・卒業生・地域向け:研究成果、社会連携、公開講座、ニュース
・企業向け:研究連携、人材、産学連携窓口
3. 体制と役割(責任の所在を明確にする)
3-1. 最低限必要な役割
・アカウント責任者:運用方針、最終責任。緊急時の判断者
・投稿管理者:投稿作成、予約投稿、素材管理
・承認者:内容チェック(複数名が望ましい)
・モニタリング担当:コメント・反応・炎上兆候の監視
・危機対応担当(兼務可):緊急連絡網の起点、関係部署調整
3-2. 決めておくこと(例)
・投稿の最終承認者は誰か(不在時の代理は誰か)
・土日祝・夜間に燃えた場合の連絡ルート
・削除の判断権限(現場で消してよい範囲/必ず上長判断の範囲)
・学生スタッフが関われる範囲(投稿作成まで、返信は不可など)
4. 投稿ルール(作る前に見るチェック観点)
4-1. 事実確認(大学は「正確さ」がブランド)
確認必須の項目
・日時、場所、申込締切、定員、対象者、参加費
・学内ルール(学内限定/学外公開可)
・組織名、部署名、教員名、肩書、受賞名、研究名の表記
・引用・転載の可否(画像、図表、記事、他者投稿)
・第三者が写る写真の扱い(同意の有無)
やってはいけないこと
・未確定情報を「確定したように」書く
・憶測で理由を説明する(中止理由、トラブル原因など)
・研究成果を誇張する(断定表現、医療効果のような誤解)
4-2. 表現(誤解を生みにくい書き方)
推奨
・一文を短く、数字や締切は目立つ位置に
・固有名詞は正式名称を優先(略称は2回目以降)
・「誰が、何を、いつ、どこで、どうする」が一読で分かる
注意が必要
・煽り表現(絶対、必ず、史上最高、誰でも受かる、など)
・比較で他校を下げる表現
・冗談が通じにくい皮肉、内輪ネタ
4-3. 個人情報・プライバシー(大学は守る側)
個人情報の例
・学生番号、成績、出欠、住所、電話、メール、顔写真と氏名の組合せ
・病気・障害・家庭状況などセンシティブ情報
・未成年の学生が特定できる情報
写真・動画の原則
・個人が特定できる場合は原則として同意を取る
・イベント撮影は、事前告知(撮影・公開の可能性)と掲示をセットで行う
・写り込みが避けられない場所では、ぼかしや撮影角度で配慮
・第三者のPC画面、名簿、掲示物の写り込みに注意
4-4. 著作権・肖像権・商標(知らなかったでは済まない)
よくある落とし穴
・他社サイトの画像を保存して再投稿
・BGM付き動画で権利処理が不十分
・キャラクター、ロゴ、商品名の扱い
・他者の写真を「出典を書けばOK」と誤解する
原則
・原則は自前素材か、利用規約で再利用が許可された素材のみ
・不明なら使用しない。必要なら権利者に確認する
4-5. 公平性・中立性(大学の立場を守る)
NGになりやすい例
・特定政党・候補の応援に見える投稿やリポスト
・宗教活動の勧誘に見える発信
・特定企業の商品推しが過度で広告に見える発信
・就職先や企業を名指しで優劣比較する
OKに寄せる工夫
・産学連携や寄附企業の紹介は、事実(取り組み内容)中心にし、宣伝調を避ける
・利益相反(関係者が関わる案件)は、ルールに沿って透明性を確保
5. 返信・コメント対応ルール(火種を増やさない)
5-1. 基本姿勢
・感情で返さない。短く、事実で、丁寧に
・公開の場で個別事情に踏み込まない(個人情報の誘発を防ぐ)
・議論に勝とうとしない(大学は対立構造に入らない)
5-2. 対応方針(例)
・問い合わせ:窓口案内(電話・メール・フォーム)へ誘導
・指摘(誤字・情報違い):確認して必要なら訂正、謝意を示す
・批判:事実確認の上で必要最低限の説明。荒らしはルールに従い非表示・通報
・差別、暴力、誹謗中傷、個人情報晒し:即時対応(記録→非表示/削除検討→通報→上長共有)
5-3. DM運用(例)
・DMは原則受けない/受ける場合は返信時間と範囲を明示
・個別の合否、成績、個人情報を含む相談はDMで扱わない
6. NG事例集(大学で起きやすいパターンと直し方)
以下は「やってしまいがち」な例です。現場教育用にそのまま使えます。
6-1. NG事例1:締切と条件が間違っている
悪い例
・「出願は来週まで!」(具体日なし、実は前日が締切)
なぜNG
・受験生の行動に直結し、信頼を失う
改善例
・「出願締切:1月15日(23:59)/出願要件はこちら(学内ページへ)」のように具体化し、最終確認を必須にする
6-2. NG事例2:研究成果を誇張する
悪い例
・「この研究で病気が治る!」
なぜNG
・科学的誤解、医療広告的表現、社会的影響が大きい
改善例
・「~の可能性を示す結果」「今後は臨床研究が必要」など、段階を明示
6-3. NG事例3:学生の顔と氏名を無断で掲載
悪い例
・集合写真に氏名タグ付け
なぜNG
・同意なしの肖像・個人情報。トラブル化しやすい
改善例
・掲載同意の取得、タグ付け禁止、識別できる場合はぼかし
6-4. NG事例4:内輪ノリで誰かを傷つける
悪い例
・「寝坊常習の○○先生、また遅刻w」
なぜNG
・ハラスメントに見え、教職員・学生の安心を損なう
改善例
・個人いじりを避け、イベントの価値や学びに焦点を当てる
6-5. NG事例5:政治・宗教に見える投稿
悪い例
・特定候補者の演説写真を「応援しています!」と投稿
なぜNG
・大学の中立性が損なわれる
改善例
・公共政策イベントの告知は事実(日時・テーマ・登壇者)中心に。応援・賛否は書かない
6-6. NG事例6:炎上中に言い返す
悪い例
・「理解できない人は見ないでください」
なぜNG
・火に油。拡散が加速する
改善例
・状況確認中の旨を短く伝え、沈静化を優先。必要なら投稿停止
6-7. NG事例7:学生の個人アカウントを特定・晒し
悪い例
・問題投稿をした学生を名指しで糾弾
なぜNG
・二次被害、法的リスク、大学の信頼失墜
改善例
・個別案件は学内手続きで。SNSでは一般論と窓口案内に留める
6-8. NG事例8:著作権が不明な画像の転載
悪い例
・ネットで見つけた図をそのまま掲載
なぜNG
・権利侵害の可能性が高い
改善例
・自作図に置き換え、必要なら許諾を取得。難しければ使わない
7. 承認フロー例(現場が回る形にする)
「速さ」と「安全」を両立させるため、投稿を3レベルに分けると運用が安定します。
7-1. 投稿レベルの分類
レベルA(通常)
・イベント告知、学生生活紹介、キャンパス風景、記事更新案内
承認
・作成者→承認者(1名以上)→投稿
レベルB(要注意)
・入試、学費、奨学金、成績、制度変更、国際情勢が絡む内容
・学外メディアが絡む話題、共同研究、企業名が前面に出る内容
承認
・作成者→部門承認→広報責任者または関係部署(入試課、教務、法務等)確認→投稿
レベルC(高リスク)
・事故、災害、感染症、トラブル対応、個人情報に触れる可能性
・炎上中の説明、謝罪、訂正、クレームが多い案件
承認
・危機対応チーム(広報責任者+関係部署)で文面確定→投稿
・原則として予約投稿はしない
7-2. 承認チェックリスト(そのまま使える)
投稿前チェック
・日時/場所/締切/金額/対象が正しい
・固有名詞(大学名、学部名、氏名、肩書)の表記が正しい
・個人が特定される写真は同意がある(または特定不可)
・転載物の権利がクリア
・差別的・排他的・誤解を誘う表現がない
・政治・宗教・企業宣伝に見える要素がない
・緊急時の窓口(問い合わせ先)が必要なら入っている
・リンク先(学内ページなど)が正しい(導線確認)
保存・記録
・投稿案、承認者、承認日時、使用素材の出所、同意書の有無を記録
・炎上時に備え、投稿前後のスクリーンショット保存ルールを決める
7-3. 例:短縮版の承認フロー(忙しい部署向け)
・定型投稿(毎週の連載、定例イベント)はテンプレ化し、月初にまとめ承認
・当日の写真投稿は、事前に「撮影範囲」「掲載可否」「表現ルール」だけ承認しておき、当日運用の自由度を確保
・ただし入試・制度・危機関連は例外なく個別承認
8. 危機対応(炎上・事故・誤投稿・乗っ取りへの手順)
大学広報 sns で一番大切なのは、危機が起きた瞬間に「誰が」「何を」「どの順で」するかが決まっていることです。
8-1. 危機の種類(大学で多いもの)
・誤情報(締切違い、場所違い、制度説明ミス)
・個人情報の露出(学生・教職員、受験生関連)
・不適切表現(差別、ハラスメント、軽率な冗談)
・炎上(文脈誤解、切り抜き拡散、外部批判の集中)
・事故・災害(施設事故、事件、天候、感染症)
・アカウント不正アクセス(乗っ取り、勝手な投稿)
8-2. 初動の鉄則(最初の30分の行動を決める)
1 記録する
・該当投稿、コメント、拡散状況のスクリーンショット保存
・時刻、発見者、状況のメモ
2 拡大を止める
・予約投稿の停止(関連アカウント含む)
・状況により、投稿の非公開/削除を検討(削除だけが正解ではない)
3 関係者に共有する
・危機対応連絡網へ即連絡(広報責任者、関係部署、情報システム、法務/総務など)
・「何が起きたか」「どの投稿か」「どれくらい広がっているか」を短く報告
4 事実確認をする
・原因(誤記、素材、意図、第三者投稿など)を特定
・学内で統一見解が必要な場合、SNS担当だけで判断しない
8-3. 公開対応の基本パターン
パターンA:誤情報を出した(悪意なし)
・訂正が必要なら、訂正文を早めに出す
・例:誤りを認める→正しい情報→影響が出る人への案内→再発防止(必要に応じて)
パターンB:不適切表現・配慮不足
・まずは該当表現の撤回(非公開/削除)を検討
・謝罪は「何に対して」「どう改善するか」を短く明確に
・長文の言い訳は逆効果になりやすい
パターンC:事実関係が未確定(事故・事件など)
・憶測を出さない
・「確認中」「安全確保を最優先」「続報は公式発表で」を短く
・詳細は公式サイト/記者発表など、一次情報の発信点を一本化
パターンD:アカウント乗っ取り
・即時にパスワード変更、二要素認証、ログイン端末整理
・プラットフォームへの報告
・影響がある場合は「第三者による不正アクセスの可能性」と「現在の対応」を告知
・復旧後に再発防止(権限管理、端末管理)を明記
8-4. 「削除するか残すか」の判断基準(迷いポイントを減らす)
削除/非公開を優先しやすいケース
・個人情報が含まれる
・差別/誹謗中傷など明確に不適切
・権利侵害の可能性が高い
・不正アクセスによる投稿
訂正を残す選択肢があるケース
・誤情報だが、すでに広く拡散している(訂正文の方が到達しやすい)
・議事録的に経緯を残す必要がある(大学として透明性を示す)
重要
・削除した場合でも、社内には記録を残す(原因究明と再発防止のため)
9. アカウント管理とセキュリティ(人より仕組みで守る)
9-1. 必須ルール
・共有パスワードをやめ、権限付与で運用(可能な範囲で)
・二要素認証を必ず有効化
・退職・異動・委託終了時は即日で権限削除
・ログイン端末の管理(個人端末での運用可否、紛失時の連絡)
・パスワードポリシー(長さ、使い回し禁止、更新頻度)
・予約投稿の定期点検(災害時に不謹慎投稿になりやすい)
10. 定期運用(ガイドラインを形骸化させない)
10-1. 月次でやること(例)
・投稿の振り返り(反応が良かった要因、誤解された要因)
・問い合わせ・クレームの傾向整理(FAQ更新に反映)
・素材と同意書の保管状況チェック
・承認フローの詰まりを改善(誰で止まるかを見える化)
・炎上兆候の学内共有(早期発見の目を増やす)
10-2. 年次でやること(例)
・ガイドライン改訂(プラットフォーム仕様変更、法令、学内体制変更に対応)
・新任者向け研修(NG事例、個人情報、撮影ルール、危機対応の演習)
・緊急連絡網の更新(電話番号、担当者、代理者)
付録:すぐ使えるテンプレート
A. 返信テンプレ(問い合わせ誘導)
・お問い合わせありがとうございます。個別の状況を確認するため、恐れ入りますが○○(窓口/フォーム)へご連絡ください。担当よりご案内いたします。
B. 訂正テンプレ(誤情報)
・【お詫びと訂正】先ほどの投稿に誤りがありました。正しくは「○○」です。ご迷惑をおかけし申し訳ありません。最新情報は○○(公式案内)をご確認ください。
C. 確認中テンプレ(未確定の事案)
・現在、事実関係を確認しています。安全確保を最優先に対応しており、確認でき次第、公式にお知らせします。
D. コメント方針の掲示文(運用ポリシー)
・当アカウントでは、皆さまに安心してご利用いただくため、誹謗中傷、差別表現、個人情報の掲載、営利目的の宣伝等は予告なく非表示/削除する場合があります。ご了承ください。
まとめ
大学広報 sns は、発信力がある分だけ、基準と手順がないと運用者の負担が急増します。ポイントは、投稿内容をレベル分けして承認を最適化し、NG事例を共有して迷いを減らし、危機対応は初動の手順を決めておくことです。このガイドライン例をたたき台に、各大学の規程、入試体制、個人情報取り扱い、委託範囲に合わせて調整すれば、現場が回りやすく、長期的に信頼が積み上がる運用に近づきます。
お困りのことがあれば、下記に進んでいただきまずは無料相談からお問い合わせください。
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